脱・イクメン後進国!ドイツの成功事例にみる日本の現状と課題
海外における父親の育休事情について調べていたところ、日本はドイツに学ぶと良いのでは?と思ったので簡単にまとめておきたいと思います。
父親による育休取得
厚生労働省の発表によると、日本国内における父親の育休取得率は1.89%(2012年度)で、先進諸国の中でも極めて低い水準となっています。
なぜドイツなのか?
ドイツでは、「育児は母親の仕事」とみなす価値観が根強く、父親の育休取得率は3.3%(2006年)と日本並みの低水準でした。しかし、政府による家族政策の改革を経て、男性の育休取得率は29.3%(2012年)まで改善しました。
イクメン育成のモデルケースとしては、パパ・クオータ発祥の地であるノルウェーなど北欧諸国が有名ですが、短期間で大きな成果を上げたドイツにこそ学ぶべきところが多いのではないかと感じました。
ドイツ成功の理由は?
ドイツの成功の背景には以下の4つの要因があったと考えられます。
- 所得保障の強化
- 育休需要の顕在化
- 社会通念の変化
- 受入体制の確立
ひとつずつみていきましょう。
所得保障の強化
ドイツでは、男女の賃金格差が大きく、所得減少への不安が父親の育休取得の障害となっていました。そこで2007年1月、当時の政権(メルケル首相)は育児休業中の新たな所得保障制度「両親手当」を導入。新制度では、育休取得によって所得が減少する人に対して、子どもが1歳になるまでの12カ月間(両親ともに育休を取得する場合には2カ月の延長が可能)、月額1,800ユーロの範囲内で所得の67%を保障しました。この結果、父親の育休取得にともなう経済的負担は大幅に軽減されたのです。
育休需要の顕在化
ドイツ人口調査局が2003年に行った調査では、41%の男性が、もっと育児に時間を使いたいと回答しました。このように、子育てを担う若い世代を中心に、育児に積極的に参加したいと願う父親が一定の割合を占めていたことも、「両親手当」の導入を後押ししました。
社会通念の変化
一方、ドイツでは、「育児は母親の仕事」とみなす旧来的な価値観も根強く、「両親手当」の導入には多くの批判の声も寄せられ、この新しい家族政策をめぐる議論はメディアでも盛んに取り上げられました。この過程で、育児への積極的な参加を希望する新しい価値観を持つ父親の存在が大きくクローズアップされるようになり、徐々に父親の育児参加を肯定的に捉える世論が形成されていったようです。
受入体制の確立
ドイツを含む欧州では、通常の労働者は25-30日の有給休暇を持っており、原則として完全取得されます(取得されない場合は管理職が責めを負うため)。また、バカンスなどで1カ月ほど会社を休むことは珍しいことではなく、このため数ヶ月程度であれば育休を比較的取得しやすい状況にあったと考えられます。
日本の現状と課題は?
ドイツの状況と比較しながら整理していきたいと思います。
所得保障
日本では、2014年4月に育児休業給付金の支給率が67%に引き上げられました(ただし取得開始から180日目まで、以降は50%)。また、「パパ・ママ育休プラス」のように父親の育休取得に対するインセンティブも用意されています。制度に関しては、ドイツと比較して遜色ない程度に整ってきていると言えるのではないでしょうか。(さすがに北欧と比べると見劣りしますが)
育休需要
大手人材会社マイナビが2014年12月に行った調査によると、男子大学生の約4割が「育児休暇を取って積極的に子育てしたい」と回答しました。日本においても若い世代を中心に男性の育児への参加意欲は着実に高まっているものと思われます。
社会通念
日本でも、ドイツ同様、「育児は母親の仕事」とみなす価値観は未だに根強く残っています。しかし近年では、産後クライシスがメディアによって大きく取り上げられ、また民間企業のサイボウズがCMでワーキングマザーの問題を提起するなど、これからの家族のあり方に社会の関心が高まりつつあります。このような議論の輪が広がることで、今後、男性の育休取得に注目が集まる可能性は充分にあると思われます。
受入体制
日本では、欧州と比べて有給休暇日数が少なく、その取得率も低い傾向にあります。このため、長期休暇を取得する労働者の数も少なく、多くの企業では社員の長期休暇に対応する環境が充分に整っていないのが実情です。これが父親の育休取得を阻む一つの障害となっていると考えられます。
この点については、日本とドイツで状況が大きく異なりますので、企業の理解を得るためにインセンティブの導入なども別途検討する必要があるかもしれません。このあたりはあらためて別のエントリーで検討してみたいと思います。
まとめ
ということで、脱・イクメン後進国を実現したドイツの成功事例を参考に、日本における父親の育休取得の現状と課題を整理してみました。制度面に関しては、充分とはいえないまでも少しずつ整いつつあるように思います。今後は、この種の議論がさらに発展し、企業が労働者の長期休暇に堪えうる環境を構築できるかどうかが、日本が脱・イクメン後進国を実現するための大きな鍵を握りそうです。それでは今回はこのあたりで。
(了)
※主な参考文献
父親の育休取得を実現しつつあるドイツ〜成果の背景と日本への示唆〜(2008年6月)/みずほリポート
検討される育児休業給付金の拡充〜男性の育児休業の取得は今度こそ拡大するか〜(2013年12月)/みずほインサイト
父親の育児参加を促す新しい家族政策(ドイツ:2014年10月)/労働政策研究・研修機構(JILPT)
Moss, P. 2014. International Review of Leave Policies and Research 2014.
<イベント告知>女人禁制の“ぱぱ・ラウンジ”を開催します!
3/5(木)に、こそだてビレッジ@RYOZANPARK大塚にて「ぱぱ・ラウンジ」というイベントが開催されることになりました。僕はホストとして参加させていただく予定です。
以下、詳細となりますので、ご興味をお持ちいただけましたらぜひご来店くださいませ〜。
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ゆるやかに流れる時間のなか
仕事の話は隣に置いて。
『パパだって、リラックスする時間がほしい』
子育てのこと
夫婦のこと
家族のこと
休日の過ごし方や
仕事と家庭のバランスのこと。
いろんな話を、自由に、自由に。
夜な夜な集う、ぱぱのための秘密基地。
こそだてビレッジにて男性限定の”ぱぱラウンジ”を開店いたします。
<日時>
2015年3月5日(木)19:30-22:00
<場所>
RYOZANPARK大塚 こそだてビレッジ
〒170-0005
東京都豊島区南大塚3-36-7 T&Tビル7階
RYOZAN PARK FAMILY
JR山の手線「大塚駅」徒歩3分
<参加費>
チャージ代 2,000円(アルコール1缶付き)+1品持ち寄り
※それ以降の飲み物は各自ご持参ください!
<定員>
最大20名
<協力>
パパノセナカ(NPO法人オトナノセナカ)
<参加条件>
・男子であること
子どもがいても、いなくてもOKです!
<お申し込み>
以下よりお申し込みいただけます。(Facebookアカウントが必要です)
男性の育休取得にまつわるいくつかの誤解
育児休業(以下、育休)を取得して驚いたのが、
「育休について知っている人が意外と少ない」
「むしろ誤解している人の方がはるかに多い」
ということでした。(非子育て世代だけでなく、現役の子育て世代含め)
今回は、僕がこれまでに実際に目の当たりにした、育休にまつわるいくつかの誤解を解きながら、その制度について解説していきたいと思います。
※見出しには「男性の」と書きましたが、基本的には女性にもあてはまると思います
会社に制度が無いから取得できない
これは全くの誤解です。
育児休業とは、子どもを養育する労働者が取得できる休業のことで、法律によって認められた制度であり、産休や育休と同様、就業規則への記載が義務づけられています。
労働者は、その養育する 1 歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第5条より)
万一、就業規則に記載がない場合でも、事業主は労働者からの育休の申し出を拒否することはできません。
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第6条より)
つまり、(雇用期間が1年に満たないなど一部の例外を除き)男性も女性も正社員もパート・アルバイトも全ての労働者が育休を取得することができるのです。もちろん夫婦の同時取得も可能です。
※参考リンク
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
育休中は収入が無くなる
これも実は誤解です。
育休期間中は「育児休業給付金」が支給されます。
給付金の支給額は、休業開始前の賃金の67%(半年以降は50%)となっていますが、育児休業給付金は非課税であり、社会保険料も免除されるため、実際は手取り賃金の8割程度が保障されることになります。
ときどきこの給付金を、全て会社が負担している、と誤解されている方がいらっしゃいますが、「育児休業給付金」は「失業給付金」と同様、雇用保険によって賄われており、その財源には労使折半の保険料と税金が充当されています。
※参考リンク
「雇用保険」の仕組みと課題を知る:nikkei4946(全図解ニュース解説)
育休中は全く仕事ができない
意外に思われるかもしれませんが、これも誤解です。
例えば、イクメン社長として有名なサイボウズの青野さんは、第2子が生まれた際に週に1回水曜日を育休デーとして、半年間続けられたそうです。
「育児は、仕事の成果を見直す機会」サイボウズ・青野慶久社長に聞く"イクメン"の働きかた
育休期間中の就業については、就業時間が月80時間以下、あるいは会社から支払われる賃金が8割未満であれば、育児休業給付金支給の対象となります。
「会社を長期間不在にするのは難しい」という方は、出社日数や勤務時間を減らし、働きながら育休を取得するというのも一つの選択肢かもしれません。
※参考リンク
育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の取扱いが変わります
育休を取ると出世に響く
育児・介護休業法では、育児休業の取得を理由とした不利益取扱いを禁止しています。
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第10条より)
また、不利益な取扱いに該当する具体的な行為として、以下が掲げられています。
イ 解雇すること。
ロ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
ハ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数 を引き下げること。
ニ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労 働契約内容の変更の強要を行うこと。
ホ 自宅待機を命ずること。
へ 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、 時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用 すること。
ト 降格させること。
チ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
リ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。
ヌ 不利益な配置の変更を行うこと。
ル 就業環境を害すること。
(改正育児・介護休業法のあらまし P.42より)
つまり、育休の取得を理由として不利益な人事評価を行うことは違法である、ということです。
では、「育休を取ると出世に響く」というのは全くの誤解と言えるのか。
残念ながら、ある意味では事実だと思います。
なぜなら、育休期間中は評価の対象になり得ませんし、評価者も人間ですから同程度の成果をあげているのなら、休みなく頑張って働いている社員をより評価してあげたいと思うのが人情だからです。
ただ、「育休を取得するには仕事を諦めなければならないのか」というと、それもまた違うと思うのです。
たしかに、少なからずハンデを背負う可能性があることは否定しませんが、そのハンデを覆すほどの圧倒的な成果を上げることができれば、それはやはり正当に評価されるのではないでしょうか。
育休の取得が出世に及ぼす影響なんてそのくらいのものなんじゃないかな、と個人的には思っています。
※参考リンク
おわりに
厚生労働省の発表によると、現在、男性の育休取得率はわずか2%程度だそうです。
個人的には、全ての男性が必ずしも育休を取る必要があるとは考えていません。
ただ、もう少し“身近な選択肢”としてあってもいいんじゃないかな...とも思います。
ぜひ、一度夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。
(了)
いくらオペレーションをこなしても「家事育児をやっている」にはならない
のかも、というお話。
先日、こんなイベントに参加させていただきました。
育休を取得したことのある or 予定しているパパ3人による座談会だったのですが、参加者の一人(ゾーホージャパン松本さん)がこんなことをおっしゃっていました。
(育休を取得してみて)当事者意識を感じるようになったというのもあります。育休を取るまでは、何を食べさせるか、何を着せるか、あらゆることを全て奥さんが考えていて、僕は言われたことをやっていただけだったんです。
これを聞いて「あっ、なるほど」と思ったんですね。
「ウチの旦那、本人は家事育児を頑張っているつもりみたいだけど全然ダメ」
こんなママ友との会話の中でいかにもありそうなママによるパパに対するダメ出し(被害妄想?)。その原因はこのあたりの意識の差にあるのかもしれないな、と。
パパの立場からすると、
・ゴミ出しをしている
・家の掃除をやっている
・洗濯物を畳んでいる
・子どもを保育園に送っていってる
→家事や育児を(それなりに)やってる
というような思考に陥り易いと思います。
ところが、ママからすると「ソウジャナイ」。
この考え方のどこが「イケナイ」のかと考えると、おそらく「オペレーション」と「マネジメント」の問題なんだろうと思うんです。
どれだけ必死に「オペレーション」を頑張ろうと、「マネジメント」に関与できていなければ一向に評価されない、ということですね。
これは上記の例に即すと、
・ゴミ出しであれば、ゴミ収集のスケジュールを把握しておき、前日の夜には翌日のゴミをまとめておく
とか
・保育園の送りであれば、園に預けている着替えやオムツの残量を把握した上でお出かけの準備をする
ということまでやって、はじめて「少しは家事育児をやっている」という評価を受けることができるということ。
※余談ですが、料理に対するママの評価って比較的高いような気がします。これは、料理が、献立を考えたり、買い物にいったり、複数の料理を平行で作ったり...とマネジメント要素を多く含んでいるためではないかと思っていたりします。
パパからするとちょっとハードルが高いようにも感じられますが、でもよくよく考えるとこれって当たり前のことなんですよね。仕事に置き換えて考えてみるとわかりやすいと思います。
部下や後輩がいる人はもちろんのこと、いない人であっても、他者や自分自身のマネジメントをすることなく淡々とオペレーションこなすだけで、果たして会社から充分な評価を得ることができるでしょうか。おそらくできません...よね?
従って「マネジメントをやらずにオペレーションをどれだけこなそうとも、家事をやっていることにはならない」という評価は極めて妥当なものではないでしょうか。
逆に「普段仕事が忙しくてなかなか家事育児に関われない」というパパでも、マネジメントを意識すれば、ママからの評価を高めることができるかもしれません。ここは一つ前向きにトライしていきたいですね。
そういうわけで、僕も自分の過去を反省して、これからは家事育児におけるマネジメントの比率を高めるべく頑張ってまいる所存です。
(了)
※お知らせ
冒頭にご紹介したイクメン座談会ですが、2/6(金)にも同様のイベントが開催されるようです。もし、ご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、下記のリンクよりお申し込みいただけるようですので、ぜひ。
『残念な夫。』はどのようにして“残念”になったのか
いや、面白かったです。というか、グサグサきました(笑)
自分はこのドラマにでてくる夫たちほど残念ではない(...と思いたい)のですが、おそらくある程度当てはまっているところもあるのだろうなと思いながら観ていました。そこで、今回はなぜ“残念な夫”が生まれるのかという理由について少し考えてみました。
かつては“残念な夫”では無かったはず
おそらく作中の夫も結婚当初から“残念”だったわけでは無いと思います。そもそも最初から残念だと思っている異性を自分のパートナーに据えたいと考える女性はいません...よね?
となると、「妊娠」「出産」「育児」というライフイベントを通じて、次第に夫が“残念”になってしまった(あるいは妻側がそう感じるようになった)、ということなのだろうと推察されます。
では、「いったいこの夫の何が残念なの?」と考えると、一言で表すなら“変化に適応できていない”ところなのではなかろうかと。作中、特に印象に残った台詞がありました。
それは、
「男って変わる事が苦手なのよ」
という台詞です。
「妊娠」「出産」「育児」にともなう家庭環境の変化に夫がついていくことができず、結果として妻との間に軋轢が生じてしまう。これこそが“残念な夫”を残念足らしめている要因なのではないかと思うのです。
これを「夫側の意識が低い」と一蹴してしまうのは簡単です。しかし、変われない夫にも変われない理由があるのではないか、というのが今回の主張です。
「妊娠」「出産」において夫は“最も当事者に近い他人”
誤解を恐れずに言うと、夫にとって「妊娠」や「出産」は結局は他人事です。自分のお腹の中で子どもが大きくなっていく感覚も、出産にともなう言葉では言い表せないような痛みも、夫には感じることができません。せいぜい端から見ていて「お腹大きくなったな」とか「凄く痛いんだろうな」と思う程度です。
一方、女性にとっては「妊娠」「出産」はそれこそ人生における一大イベント。日々変化していく自分のカラダと向き合いながら、次第に大きくなっていく新しい生命の胎動を感じる。そんな生活が十月十日に渡って続きます。この間に母親は少しずつその母性に目覚めていくのです...とここまで完全に妄想です。
いずれにせよ、この過程において夫婦が全く同じ意識を共有できるかというと、それはちょっと難しいんじゃないかと思うんです。これが一つ目の問題。
子どもとたった一人で向き合い続けることの「大変さ」
「妊娠」「出産」においてどこか他人事だった夫がはじめて当事者となる、それが「育児」です。ただ、ここにはまた別の問題があります。それは、多くの妻が産後休暇や育児休暇など“育児に専念する期間”を持つのに対して、多くの夫はそのような機会を持たない傾向にあるという現状です。(厚生労働省の調査によると男性の育休取得率は2%程度)
子どもは親に多くの幸せをもたらしてくれる、子育ては楽しい、これは間違いありません。しかし、それでもなお、生まれたばかりの子どもと2人きりで毎日を過ごすというのは体力的にも精神的にも大変なことなのです。
にも関わらず、多くの父親はおそらくその「大変さ」充分に理解していません。週に5日は仕事に出ているわけですし、休日も妻が一緒にいることがほとんどなので、子どもと2人きりで毎日過ごすことの「大変さ」というのはなかなか伝わり難いのだと思います。これがもう一つの問題。
“残念な夫”にならないための処方箋
夫が“残念”になってしまうのは少なくとも二つの理由があることがわかりました。これはどちらも夫個人の問題というよりも、夫と妻それぞれの経験の差から生まれる意識の違いにありそうです。ですから、問題を解決するにあたっては夫婦双方の歩み寄りが必要となります。
では、どうすれば“残念な夫”を生まない、あるいは“残念な夫”を更正させることができるのでしょうか。個人的には、経験の差を埋めるのは現実的ではないので、意識の違いを埋めるしかないと考えます。
まず、前提として上記のような意識の違いが生じているということを夫婦が認識する、ということが重要です。夫は「妻は自分が思っている以上に大変なんだろうな」ということ、そして妻は「夫は自分の大変さを理解するのが難しいのだろうな」ということをお互いに理解するということです。その前提に立ってはじめて建設的なコミュニケーションが可能となります。
その上で、夫側は妻の大変さを少しでもわかろうとする努力が必要です。例えば妊娠中であれば、通院への付き添いや父親学級への参加などが考えられます。出産にはぜひ立ち会いうことをオススメします。また育児においては、育休を取得するのが難しいという場合でも休日に一人で子どもと向き合う機会を持つなど方法はいくらでもあるはずです。
また、妻側も妊娠中のカラダの変化や出産・育児の辛さや悩みを積極的に訴えていくことが重要だと思います。「女の勘」という言葉があるように、女性は物事を察知する能力に長けています。夫に対して「それぐらいは察して欲しい」とか「イチイチ話をするまでのことではない」と感じることもあるかもしれません。しかし、夫も妻のことを理解するのに苦労している、ということを理解して欲しいのです。
と、ここまでつらつらと述べましたが、これはあくまでも僕の一個人の(そして現時点での)見解です。作中では今回、妻が自分の心情を明らかにしました。今後、妻のSOSを受けて“残念な夫”はどのように変わって(あるいは変わらない?)いくのでしょうか。次回以降の放送を楽しみに待ちたいと思います。
(了)
2歳の娘から教わったイヤイヤ期とのじょうずな付き合いかた
先月末に2歳を迎えたばかりの娘はイヤイヤ期のまっただなか。さてどうしたものか、というのが今回のお話。
我が家には現在生後3週間の息子がおり、ママは息子のお世話で精一杯。必然的に娘とは僕がマンツーマンになることが多いのですが、ママに甘えられない寂しさも手伝って最初はなかなか大変な思いをしました。
例えば、
- ご飯の途中で食事を放棄する(食べさせようとすると「イヤなの!」)
- お出かけの際の寄り道がエンドレス(連れ戻そうとすると「イヤなの!」)
- よく理由はよくわからないけど「イヤなの!」
こんなことは日常茶飯事で、ときには癇癪を起こすことありました。
何がそんなにイヤなの?
これはなんとかしなくては...(自分も娘もツライ)ということで、解決方法を模索することにしました。まず、ギモンに思ったのが「イヤなの!」っていうけどアナタ、一体何がそんなに嫌なのさ?というところ。そこで最近の彼女がよく口にする言葉を振り返ってみたところ、
- これなに?
- 自分で(やりたい)!
- イヤなの!
このあたりが非常に多くなったことに気が付きました。なるほど。そういえばイヤイヤ期は自我の芽生えによって訪れると何かの本で読んだことがあったような。おそらくは、世の中のことがいろいろとわかってきて(これなに?)、自分でいろんなことをやってみたくなって(自分で!)、それを妨げられると「イヤなの!」とうことなんだろうな。
娘の意思を尊重すべし
そこで僕がトライしたこととしては、まずは娘の意思を尊重すること。もっと具体的に言うと、否定の言葉をなるべく使わない/できる限り彼女の行動を妨げないということでした。それは「イヤなの!」という言葉の背景には、「自分はもう大人なんだぞ!」という彼女のメッセージがあるように感じられたからです。イヤイヤ期というのはイコール成長期でもあるので、次の段階へ成長しようとしている彼女を一人の人間として尊重するように心掛けたのですね。ただし、危ないことなどはやはり止めなければいけませんので、そいういうときにだけ毅然として「駄目だよ!」と伝えるようにしました。
これは効果テキメンで、彼女の「イヤなの!」という回数は目に見えて減るようになりました。さらにかつてのような癇癪を起こすこともほとんど無くなりました。
“お約束”の効用
しかし、意思を尊重する、というのは口で言うのは容易いのですが、行うとなるとなかなか大変です。それは2歳になったばかりの子どもであればなおのこと。例えば、僕の娘は坂の昇り降りがとても好きで、坂を見つけると目を輝かせて駆け寄っていきます。そうしてはじまった“坂遊び”が1回で終わるわけもなく放っておくと30分でもときには1時間でも遊び続けるわけなんですね。これを全て許容するとなると、保育園の送り迎えやお出かけの際の予定が全く読めなくなってしまいます。でも無理矢理引きずってしまっては本末転倒...さあ、困ったぞ。
そこで合わせ技でもう一つ試したのが“お約束”です。これは例えば、娘が坂の上り下りをはじめたら、事前に「あと○回でおしまいだよ」という約束を娘と交わすことでした。ここで心掛けたのは、一方的に約束を押し付けるのではなく、彼女からも「約束する」という同意を取り付けること。最初は“お約束”の意味なんてわからないので、「約束したからおしまいだよ」と言っても、「もう一回」「イヤなの!」となかなか納得してくれませんでした。しかし、約束が守れたことをきちんと褒めたあげながら、辛抱強く何度も繰り返すことで彼女は少しずつその意味を理解し、次第に「イヤなの!」という言葉は用いないようになんりました。
また、これは後になって気づいたことなのですが、この“お約束”ができるようになったことで、彼女の自尊心が更に満たされるという思わぬ収穫もありました。
親も日々成長なり
このようなやり取りを経た今、僕と娘は以前より深い絆で結ばれるようになったと感じています。もちろん、まだまだ「イヤなの!」となることもありますが(笑)可愛いものです。
今回の件を通じて僕が学んだこと。それは、子どもの成長に合わせて親も成長しなければならない、ということです。振り返ってみると、イヤイヤ期を迎えた当初の僕は娘に“構い過ぎていた”のだろうと思います。そしてそれは成長した彼女にとって心地良いものでは無かったのでしょうね。「イヤなの!」は「いつまでも子ども扱いするんじゃない!」というメッセージに他ならなかったのだと今ならわかります。
おそらくはこの先も今回のように、僕は娘の成長においていかれないように必死にしがみついていくのでしょう。今後の娘のそして自分自身の成長が益々楽しみです。
(了)
プチ炎上中?サイボウズ“ママにしかできないこと”の真意について考えてみた
先日公開されたサイボウズによるワークスタイルムービー第2弾『パパにしかできないこと』がまたまた物議を醸しております(笑)
サイボウズワークスタイルムービー「パパにしかできないこと」 - YouTube
前作同様、賛否両論多くの意見が寄せられていますが、今回はかなり辛口の意見が多い印象です。
また、 制作側の意図に言及するエントリーもあり、こちらも興味深く読ませていただきました。
僕自身、前回のエントリーで思うところを述べさせていただきました。
...が、まだモヤモヤとしたものが残っているので、今回は少し距離をおいてもう一度この作品について考えてみたいと思います。
『パパにしかできないこと』は『大丈夫』へのアンサーなのか?
前作の『大丈夫』では、ワーキングマザーに関する問題を広く社会に対して提起したサイボウズ。
サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」 - YouTube
この作品は働くママを中心に多くの視聴者の心を揺り動かし、ネットのみならずテレビでも取り上げられるなど大きな話題を呼びました。
その流れを受けて発表された今作『パパにしかできないこと』。
一般視聴者が、前回提起された問題に対するサイボウズ自身の回答を期待したのは当然であったでしょう。
そして、その期待値がとてつもなく高いものであったことも、また想像に難くありません。
しかし、その期待はある意味では裏切られることになります。
昨年大きな反響を頂きましたサイボウズのワークスタイルムービー「大丈夫」。そのスピンオフムービーを本日公開致しました。今回は育児を頑張るパパへのメッセージです。ぜひご覧下さい。 http://t.co/DY81GZ26bi
— サイボウズ (@cybozu) January 5, 2015
そうです。
『パパにしかできないこと』は『大丈夫』への“アンサー”ではなく“スピンオフ”(派生作品)だったのです。
そして前作のターゲットが“広く一般社会”(おそらく)であったのに対して、今作では“育児を頑張るパパ”を主要ターゲットと位置づけています。
これは何故なのか。
おそらくサイボウズはわかっていたのではないでしょうか。
彼らが提起した問題はあまりにも根深く、たかだか3分足らずの映像作品で解決することはできないであろうことを。
それは家族の在り方やライフスタイルが多様化した現代の日本社会においてはなおのこと。
働くママの気持ちを一時でも慰めるような、あるいは溜飲を下げられるような映像作品。
それはつくろうと思えばつくれるかもしれない。しかし、それでは根本的な問題はなにも解決しない。
そこでサイボウズは上記のような一時しのぎではなく、この問題に対して真正面から取り組む選択をしました。
そうした決意がこの『パパにしかできないこと』に秘められているように僕は思うのです。
“ママにしかできないこと”という台詞に隠された真意
それでは、サイボウズがこの『パパにしかできなこと』という作品を通じて成し遂げたかったことは何だったのでしょうか。
それは、この作品に登場するような“なんちゃってイクメン”たちを立ち上がらせることだったのではないか、と僕は感じました。
世のパパたちをざっくりと分類すると、
“スーパーイクメン”
“なんちゃってイクメン”
“イクメンなんて興味無し”
にわけられると思います。(ざっくり過ぎ?)
この中で少しでも社会を変える可能性を秘めているのは、実は“なんちゃってイクメン”なのです。
“スーパーイクメン”は誰に言われるまでもなく積極的に育児に関わります。
また、“イクメンなんて興味無し”はそもそも動かすのが難しいでしょう。
“なんちゃってイクメン”たちを少しでも成長させその数を増やすことこそが、地道ではあるけれども、ワーキングマザーの抱える問題を解決する確かな道である。
少し見方を変えてみると、今作からはそのような制作意図が汲み取ることことができます。
となれば、“ママにしかできないこと”という台詞の意図は自明です。
この作品に対する批評の多くに、「子どもの寝かしつけや食事のお世話、保育園のお迎えなんてパパでもできる」という旨の主張が含まれています。
確かにそのとおりなのです。それはママや育児に積極的なパパにとってはそれは当然のことなのです。
しかし、今作がターゲットとしているのは“なんちゃってイクメン”。
「こんなの当然のことだからちゃんとやりなさい」と正論を振りかざしたところで、果たして彼らは変わってくれるでしょうか。
おそらくことはそう簡単ではありませんよね。
重要なのは“なんちゃってイクメン”自身に、
「あっ、これって俺にもできることだよな」
と気づいてもらうことなのです。
だからこそ、あえてハードルを一番低いところに設定して、寝かしつけや食事のお世話までをも“ママにしかできないこと”と表現したのではないでしょうか。
そして最後に登場するこの作品を象徴する台詞。
“奥さまのこと抱っこしてあげられるのは、あなただけなんですよ。”
これは言葉どおりの“ママをケアする”という意味を超えて、
“なんちゃってイクメンよ、今こそ立ち上がれ!”というメッセージに他ならないのではないか。
僕にはそのように感じられました。
今後のサイボウズに更なる期待
唯一惜しまれるのは、上述したとおり一般視聴者の期待と制作サイドの思惑との間にミスマッチが発生してしまった点です。
もしかすると、発信のタイミングや方法など含めてコミュニケーションには改善の余地があるのかもしれません。(ここは非常に難しいところだと思いますが)
ただそこは、転んでもただでは起きないサイボウズ。
この“ワーキングマザー問題”に関しては、今後も長期的に取り組まれていくものと思っていますので、今回の件を踏まえた今後の展開を期待して待ちたいと思います。
以上、“なんちゃってイクメン”によるなんちゃって考察でした。(了)