イクボク

育児について語る時に僕の語ること

専業主夫、辞めました。

専業主夫、辞めました。

 
...と言っても、先月末に半年間の育児休業を終えて元々勤めていた職場に復帰しただけなのですが。
 
最近では、育休を取る男性の話もそれほどめずらしいものでは無くなってきているような気もしますが、当事者としてはそれなりに考えさせられることもあって、せっかくなのでこの機会に少し振り返ってみたいと思います。
 
まず、育休を取ることを決めた経緯についてですが、これは2人目の子どもが生まれたのがきっかけでした。
 
産後、母親は少なくとも1ヶ月程度は家事等はせず、身体の回復に努めたほうが良い、と言われています(お世話になった産院でもそのように指導されました)。里帰り出産をする人は結構いると思うのですが、これは実家の方が家事育児のサポートが受けやすいということも理由のひどつなのでしょう。
 
うちも1人目の子どもが生まれたときには、里帰りではないのですが、近所に住む義母が当事失業中だったこともあって毎日のように家事手伝いに来てくれていました。ただ、義母もその後無事に就業していたため、「それじゃあ今回は自分家事育児に専念しよう」ということで育休を取ることに決めました。
 
期間は半年。これには特に明確な理由があった訳ではないのですが、産褥期(母親の身体が産前の水準まで回復するまでの期間で、一般的には6~8週間程度と言われています)は最低限必要として、下の子どもが寝返りやずり這いくらいできるようになっていれば子ども2人を妻ひとりに任せても大丈夫なんじゃないか、というような感覚だったと思います。
 
では、休暇中どのように過ごしていたかというと、最初の1カ月は、下の子を妻に任せ、僕は主に家事や上の子のお世話をしていました。既に上の子は保育園に通っていたので、平日の日中に洗濯や掃除、炊事などを済ませて、週末は2人で近所の公園に遊びに行く、というのがお決まりでした。
 
2カ月目以降は、少しずつ妻にも家事を分担してもらうようになり、3カ月目にもなると家族4人でよくお出かけするようになりました。近所の公園を巡ったり、子連れOKな美味しいランチを探したり、近場に旅行に行ったりと、ささやかではありますが平穏で楽しいひとときを過ごすことができました。
 
ただ、常に順風満帆だったかというとそういうこともなくて、家族との衝突(?)のようなものもありました。
 
一つは妻との関係。今回は夫婦で一緒に育休を取っていたのですが、それでも小さな子どもと乳児を同時に相手するというのはそれなりに大変で、お互い余裕の無さから時には喧嘩になることもありました。ただ、正直これには少し戸惑いました。「せっかく仕事を休んで家族で一緒にいるのに、なんで喧嘩なんかしなくちゃいけないんだろう」と。
 
ただ、よくよく考えてみるとこれは当たり前の話で、毎日毎日朝から晩まで顔を突き合わせていて、これは妻と一緒になってから初めての経験だったのですが、全く摩擦が生じないわけはないですよね。(もちろん、世の中には全く喧嘩をしないという素敵なご夫婦もいらっしゃると思いますが)
 
そこで、あまり悲観的にならずに、喧嘩になったらなったでほとぼりが冷めるのを待って、冷静になったところでよく話し合ってみて、できるかぎりお互いに歩み寄り、どうしても相容れないところは潔く諦めよう...と考え方をあらためることにしました。少しドライに感じられるかもしれませんが、そう割り切ってしまうことで心持ちはずいぶん軽くなったし、喧嘩を繰り返すうちにお互いの理解も以前より深まっていったように感じます。
 
それから、もう一つは上の子との関係。下の子が生まれるまでは、上の子とは良い関係を築けていると思っていたのですが、その自信はあっけなく打ち砕かれました。
 
下の子が生まれたとき、上の子はようやく2歳になろうという頃でした。2歳というと、やっと身の回りのことが自分でできるようになってきて、次第に自我が育まれ、最初の反抗期が訪れる時期です。
 
そんな時に、それまで自分にとっての絶対的な守護者である母を下の子に取られ(実際のところ妻は上の子をよく気にかけてくれていましたが)、満たされない母の愛情への渇望は反抗期にさらに拍車をかけていたように思います。
 
そんな子どもと一対一で向かい合うというのは、これもまた自分にとっては一つの試練でした。父親としては本当に恥ずかしい話なのですが、思うように意志の疎通ができず、感情的に声を荒げてしまうことも少なくありませんでした。そしてその度に自己嫌悪に苛まれることになりました。
 
それでも、長いこと一緒の時間を過ごしていると、次第に連帯感のようなものが生まれ、子どもの方も少しずつ僕と二人の状況に慣れてくれたように思います。育休も最後の方になると、夜中に泣いて起き出してきた際などに「ママ」よりも先に「パパ」を求めてきてくれるようになり、自分は父親として本当に必要とされているのだということを強く感じることができました。 
 
そして、育休を通して強く感じたことがもう一つ。それは、「働ける」ってとてもありがたいことなんだな、ということです。育休を取った半年間は僕や家族にとって何物にも代え難いかけがえのない経験でした。育休を取って良かったと、確信をもってそう言えます。ただ、休暇も後半に差し掛かると自分の中で「働きたい」という気持ちが日に日に大きくなっていくのを感じました。それは、自分にとって「働く」というのは、生活の糧であると同じくらい、あるいはそれ以上に人との繋がりや生きがいを与えてくれるとても大切なものだった、ということなのだと思います。言葉にすると陳腐に聞こえてしまうかもしれませんが、それが身に染みてわかりました。
 
今は、こうやって毎日働けること、そしてそれを支えてくれている妻や子どもや両親へ感謝の気持ちでいっぱいです。だからこそ家族に胸を張って誇れる仕事がしたい。それは単にがむしゃらに働くということではなく、今まで以上に家族と一緒に過ごす時間を大切にしながら、限られた時間の中でプロフェッショナルとして全力を尽くす。そんな働き方を模索していきたいと思います。
 
いざ、専業主夫から兼業主夫へ。
(了)